僥倖…のはずが
なんかモデルみたいなやけにキレイな中国人のねーちゃんに声をかけたら『どこの国からやってきたんですか??』から始まってあれよあれよと言う間にその日の内にビール飲んで糞狭いカラオケボックスで『歌ちょーうまいね!最高の声だね!』(実際うまい)とか言いながら体密着して頭なでてんだよ。どーなってんだよこれは…明日俺は刺客にでも刺されんのかって感じなんだが、頭の片隅では『外人の娘とカラオケして喜んでるってフィリピンパブとどう違うんだよ…』とか思ってんの。最近の俺はこんなで色々おかしい。
やっぱ体だけじゃない、心が繋がってなきゃダメなんだよ!てことなんだよなぁつまり。いや別に体も繋がっちゃいなーいんだけど。
んなバカな事考えていたら、今日はしっとりした曲しか歌いたくないのって狂ったように連続で中国語の歌を歌い続けていた彼女(つーか俺の番はよ)は一旦声を切ると、ふとうつむいて「VESさんは悲しいことないの?ワタシはたくさんアル…」と泣きそうな顔で言い出した。偶然なんだが彼女はこの一昨日香港から日本に1年間の語学留学にやってきていて。
張り詰めていた緊張は、熱唱と共に吐き出されていた。
「家族のこと、仕事のこと、学校のこと、将来のこと、日本に住むこと…不安に思う。悲しくなる」
そう言った彼女の顔は、さっきまでの大人びた顔とは違って年齢よりも少し幼く見える。なるほど…その日のうちに飲みに付き合ってくれた理由も、カラオケを手放さなかった理由も、なんとなく…。
『多分大丈夫だよ。ガンバレ、超ガンバレ』と俺はついありきたりな、しかし真剣なつもりで応援した。彼女は口を引き結んで節目がちになる。泣きたかったのかもしれない。
※
「…ワタシは日本に1年住んだ後はニューヨークに行く。日本語・英語・中国語喋れるようになって、ニューヨークでデザインの勉強をして、有名なファッションデザイナーになりたい」
外に出て酔い覚ましのブラックコーヒーの缶から湯気が立ち上る。少しさっぱりとした顔になっていた。宙に眼を泳がせる彼女。視線の先に彼女が思い描く未来が垣間見える。
ハッとする。この歳の子だけがそんな言葉を迷いなく言っていい。けど、漫然と毎日が過ぎている俺に彼女の言葉は光って見えたわけだ。いかん、下心満載で近づくにはこの娘は眩しすぎる。飛行石のペンダントを見せられたラピュタのポムじいさん状態になる俺。
聞けば彼女は今回の渡日の前に香港にも留学経験をしているそうで。目的意識高く頑張ってるんだなあ…と感嘆する。
人には歴史がある。その人の話を聞くのを、最近は面白く思う。『響くいい話聞かせてくれてありがとう』って、心の中で言っておいた。だからもう一度応援しとく。レミガンバレ。超ガンバレって。夢実現させなよって。
うーん今回は俺、結構相手の気持ちを思いやれたんじゃなかろうか?とか、いい出会いができたみたいな事を思っていたら
その3日後に連絡が一切つかなくなったしwwwwwwwwwwwフォルテッシモッッ!!!www
あーやっぱアレがいかんかったんや、「VESさんの夢はなんですか?」って聞かれた時にしょーもないこと口走ったのがいけなかったんだ…
『世界の真理を解き明かすこと…ですかねフッ…真実はいつもひとつです』とかすごいこといっとかなきゃだめだったんだ。彼女の夢とつりあってなかったんだよwwwバカwwwなぜ嘘でもいいからもっといい感じなこと言えなかったのか。
ぐっ……笑顔で別れたはずだったのに……ッ。
外人の娘の、いや女の子の気持ちとか相変わらずワケわかんねえなwww吊りたいんだけどwwww割とマジでw