バラナシ6・プージャ(a)



(陽が落ちた頃のガート)


『うおっ…!』


ステージのあるガートは先程までよりもずっと人が増えていた。





あれよあれよと言う間にさらに人は増えていく。溢れんばかりだ。




俺達3人はもうステージの近くにはいられそうもないので、ガートの上の方に登っていた。ややあって、オレンジ色の服の上にベージュの袈裟を着た僧が数人ステージへとやってきた。僧一人には一つのステージが割り当てられ、そこには線香や燭台、供え物などが用意されている。

とうとうこの人が集まる何かの開催の時刻になったのか、おもむろにインド語の宗教歌がどこからかのスピーカーから流れ始める。それに合わせて僧達が手を叩き音頭をとり始めた。パン、パンという乾いた音。その音は次第に僧達の周りに伝染していき、気付けばガートに集まった人々が一斉に手を打ち鳴らしていた。



音頭が終わった頃、ステージの燭台に火が灯され、香を焚いてゆく。舞い上がってゆらゆらと漂う煙と、祈りの儀式に揺れる炎。周りの人々はそれを押し黙って眺めている。暗闇に炎であれ、煙であれ、歌や鐘の音であれ、何かが浮かぶとそれは人の心を揺さぶる作用を持つのだ。





俺とfannyとyuiはそれを、少し高い場所のガートから見下ろしていた。距離は遠くとも、熱気は伝わる。目を奪われて、何も言えないでいる俺達の横にいた初老の警備員の男が、声をかけてきた。




「これはバラナシのフェスティバルだよ」


フェスティバル?と聞き返す。今日はたまたまフェスティバルの日だったのか?なら、運がいいと言えるけど…。




「今日が特別なわけではないよ。このフェスティバルは毎日あるんだよ」



『え、マジ?こんなんが毎日あんの!?』

3人とも目を丸くしていたと思う。「ああ、そうさ」と言ったか、言わないか。俺等の方から誇らしげに視線をステージに移した警備員につられて、俺達もまたフェスティバルに再び心を奪われていた。




明日もまたこの時間にここに来よう。と思った。



7に続く。