弟切草

SFC/サウンドノベル/1992年3月7日発売)
小説のゲーム、読むゲーム…とでもいうか、背景とBGMをバックにテキストで展開される物語を読むゲーム、サウンドノベルというジャンルを確立したのがこのゲーム。
ある日俺が友人の家に遊びに行くと(なんかいつもこのパターンだな〜)、見慣れないゲームがあった。
「おいなによこのゲーム」
「あ、やってみる?怖いよ」
「はぁ?あなたの知らない世界が好きな俺がこんなゲームにビビるかよっ。やったるわい!うら〜(ガシャコン)!」
すると、不吉な音楽が流れ始めて雷鳴とともに暗闇の中に洋館が浮かび上がった。そして血で書かれたような弟切草(オトギリソウ)という文字が…おいおいおいおい、帰りたくなってきちゃったんスけど…。
ゲームは主人公の男とその彼女の奈美が雨の夜の森をドライブするところから始まる。どこかに行った帰り、他の車は見当たらない。が、落雷で倒れてきた大木によって車がペシャンコにされてしまう。何とか脱出した主人公たちは、雨をしのぐ為に弟切草という不吉な伝説のある花に囲まれた怪しい洋館を尋ねてみた。住人の返事はない。しかしドアは開く。入ってみたはいいが、中にもやはり住人の姿はない。そこに、二階の部屋から車椅子のキィキィ…という音が聞こえる。住人?と思い、その部屋に行ってみる。電気がついていない…スイッチを探り当ててつけてみると…



チャララチャララチャララーーン!!(心臓に悪い音が鳴る)


「ぎゃあああああああっあっあーーー!!」



画面に現れたのは車椅子に乗ったミイラの顔アップ。ひっくり返りそうになった。友達は隣でクスクスと笑ってる。
「ビビッた?」「…うん、かなりね…」
とまあ、こんな感じで話は進んでゆく。途中で主人公の行動を選択することができ、選んだ選択肢によって話が変わってゆく。1時間半ほどで壮絶なEDを向かえ、何かに打たれたかのような気持ちで家に帰った。その夜は中々寝付けなかった。もし自分があの洋館に閉じ込められたら恐怖で発狂してしまう…とめどなくそんな考えが頭をめぐるほど当時の俺には怖かったのである。
が、しかし数日経って弟切草をなんか再びプレイしてみたくなった俺は友人にそのゲームを貸してもらった。そう、一度読み終わった話をもう一度読み返せるだけなら小説を買った方がはるかに割安である。サウンドノベルには一度クリアしたその先があったのだ。
二週目の出だしは同じ。ところが、細部に違いが見られる。奈美の主人公の呼び方が違ったり、洋館にたどり着くまでの展開が違ったり…。見たことのなかった選択肢を選んでゆくと、一週目とは舞台は同じもののまるで違うストーリーになった。すっかりサウンドノベルというゲームの虜になった俺は、全てのアナザーストーリーを見て最後のおまけであるピンクの栞編(エッチな話編)を出すまでに至るほどこのゲームに没頭した。

今見ると文章もなんか中学生が書いた小説みたいだし、展開も支離滅裂な展開で突っ込みどころ満載。小説を沢山読んでいた大人なんかからすると、見るに耐えないレベルの展開だったのかもしれない。後にPSで「弟切草 蘇生編」っていうリメイクが出たけど、その頃はさすがに俺も思い出補正をもってしても一周しかできなかったもんなー。映画にもなったりしてたけど、それもやっぱりダメ映画だった。
でも、このゲームはサウンドノベルというジャンルを生み出したというところに価値があるゲームなのだ。その弟切草を出したチュンソフトの第二弾「かまいたちの夜」は半端ない完成度を誇ったゲームだった。もう弟切草以上にハマったもんだ…。そちらの話はまたいつか。
弟切草かまいたちの夜ともにニコニコなんかでプレイ動画が見れるっぽい。便利な世の中だね。見る人はネタバレよけにコメ非表示がいいかも。