リアルドラクエの城を見に行こう!(1)

※この記事は10/6・7・8で三つに分かれています。これが一番最初。



原風景というのか、ガキの頃の俺のファンタジーの世界観を決定付けてしまったのはドラクエで、それは俺と同年代の子供達の大多数にとってもそうだったろう。草原があり、そこに城のグラフィックがある。そこに自キャラが入ってゆくと城下町があり、上の方に進んでゆくと城門があり城がある。
FCの頃のドラクエの城というのは四角い灰色のマスの連続で囲まれた壁があり、赤い石畳の床があって…ゲーム中で城と言われているから城と認識しているものの、後に歳を重ねた時に見た本物の城とは似ても似つかない。
ドラクエは当時(今でも?)ゲームの攻略本以外にも小説やらスピンオフ物語などが出ていて、それらに登場する城や街の挿絵はリアルな形に描かれており、(ゲームの中に出てくる城や街は実際はこんななんだな…)とガキの想像力を補完してくれた。

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何度目かのフランス旅行の計画を立てた時にいつものパリから入るのではなく、ニースから入ってパリに上っていこうという計画を立てた。途中どこか寄れそうで面白そうな街は…と目に付いたのがカルカッソンヌ

【シテ】と呼ばれる何重もの城壁に囲まれた中世から続く街並みが丘の上にあるのだという。ガイドブックに載った城の写真を見ているうちに『俺がガキの頃夢見てたリアルドラクエの城はこれだ…!』と思った。なんか前置きが長くなって面倒くさくなってしまったが、こうして俺はカルカッソンヌを訪れることになった。
この頃は本当によく一人旅をする事が多かった。シーズンオフだったとはいえ、格安航空券だった俺は一発直行便で日本からフランスへ行くことができず、途中ロシアで一泊のトランジットをする事になった。


「あの娘達多分小学生くらいだと思うけど、もう顔完成されちゃってますよね…どうして日本人と外国人ってあんなに顔のつくりが違うんだろう…」
行きの飛行機の中、左斜め前の座席に三人仲良く並んで座ってお絵かきをしたり、席を立っては遊んだりしている欧米人の子供を眺めていると、隣の席の女子大生風の日本人が声をかけてきた。(以下女子子と呼ぶ)
『そうっすね…妹に欲し……い、いやカワイイっすよね』
そう言うと女子子はクスクスと笑って「写真撮りたいんじゃないのー?さっきからチラチラ見てたの知ってるw」
女子子が一人旅らしかったこと、クスクス笑った顔が無邪気そうだったこと、写真撮りたいのがバレてたことに一気にバツが悪くなる。顔が紅潮したのがわかった。

『いや別に俺は…でもせっかくだから写真撮ってこようかなあっ…!』
席を立ち写真を撮らせてもらった。女子子さんありがとうございます、と心の中でつぶやいた。
席に戻ると女子子は聞いてもいないのに自らの旅に出た訳を語りだした。



続く。