おもてなし料理 鶏飯


ベトナムに初めて旅行に行った時バイクタクシーの兄ちゃんのトンに捕まって、14ドルで一日貸切という契約を結んだ。今になって多分相当ボラれていたんだろうなあと思うが、いちいち料金交渉なくあそこいきたいここいきたいと言っては連れて行ってもらえるというのは楽であった。
クチトンネルを見に行った帰り、トンの実家が近くにあるというので寄ってった。彼の実家は小さな一軒家に親・兄弟・その子供が暮らす3世帯家族で、そこで料理を振舞っていただけることになった。トンも笑顔のいい男だったが(ボラれてたけど)その兄弟が田舎ならではというか、気のいい男で彼は飲みきれないほどの氷水でキンキンに冷えた缶ビールやおかずをニコニコしながら持ってきて、さらに目の前で鶏を絞め殺して鶏肉入りのおかゆにしてくれた。めちぇめちゃ嬉しかったのを覚えている。
                
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鶏飯(けいはん)というのは俺は外食で食べたことはないのだけれど、奄美大島のおもてなし料理とのことで、鶏肉に錦糸玉子、椎茸…とか色々な具をご飯に乗せて鶏のだし汁で食べる料理らしい。
おもてなし…手間か、金か、それか気持ち、そのどれかがあると感じれば、人はもてなしてもらえた、と思うだろう。
鶏飯がどういう経緯でおもてなし料理と呼ばれるようになったのかはわからないけど、色々な具を用意する手間と、どんな具でも、好きなだけとって、好きなだけ食べてください!ってスタンスがやっぱりおもてなしなのかしら。
俺は人に作ってもらえる料理はどういうものでも嬉しいけれども、この人を喜ばせたいな、っていう気持ちがあったなら、それに手間かお金のどちらかは必ず付随する。トンの兄弟のおもてなしには、まさにその気持ちがありすぎるほどに込められていた。