ルーツ(2)

彼はある日地元も友達も色々なものを置き去りにして、車一台で日本全国を旅して回る事を思いついたらしい。人は色々なしがらみにとらわれている。それを捨てるというのはなかなかできない事だ。



「自分の父親も絵描きでした。父親と同じ画家と言う道に進む時、自分のルーツと言うものを考えた時、自分の生まれ育った土地は雪国だったから僕は『ユキンコ』という名前をつけました……」



俺は正直彼の絵よりもこのルーツという言葉に衝撃を受けたんだよね。
どこに行っても自分の中に子供の時からある、親から譲り受けたもの、生まれた土地で根付いたもの、それを彼はブレずに大事に持っている。俺はそれと言えるものを持ってるかな?それを持っていると言い張れる人ってどのくらいいるかな?って。
外国人なんかは地元の文化を誇りに思ってる人とか多い(フランス人は英語喋れるのに意地でもフランス語しかしゃべらねーとか、そういうのあるだろ)。
俺は自分の生まれた街と、それに近い街でしか暮らした事がない。いわば自分のルーツと呼べるものから離れて暮らした事がない。もしそこからずーっと離れた場所で暮らした時は、俺も自分のルーツとやらを感じて、誇りに思う時が来るのかな?とか考えちゃったわけ。

あれから随分経ったけど、ユキンコアキラ氏はまだ日本を回っているのか?旅を続けてて欲しいと俺は思う。