デリー7・恋に落ちたらb


高名なブーツ職人で、クリスタルケイのライブで使うブーツを作っているという父親を持つ女の子と飲んだことがある。
会って早々「あたしさっきコンビニで面白い本買ったんですよぉ〜うふふふふ。世界の珍しい昆虫百科っていう本なんですけどね〜wwこれがキモかわいい虫がいっぱい載ってるんですよぉ〜VESさんも見てみます?うふ」 などといわれ、即ドン引きしたわけだが、実は俺は会った時からあの子にダメ出しをされていたのかもしれん…。


                       ※


まあそんなたわいのない話はどうでもいい。イッブソンの美しさに度肝を抜かれた俺。彼女らがレッドフォートの正門に向かっていったので、俺もそろそろ行かなくては!と入場待ちの列に加わった。

門ではチケットの確認と一緒に所持品検査が行われる。バッグを開けての結構本格的な検査。入場待ちの列は二列あり、検査の進行速度が左右で若干違う。俺のいた列は隣の列より随分スピードが速く、先に並んでいた隣の列にいたイッブソンらをいつか追い越そうとしていた。隣に来るイッブソン(とお母さん)。



『や、やあ(ガチガチ)』 素通りするのも変なので声をかける。動機が激しくなり変な汗かく。俺はいったいどうしてしまったというのか…。 彼女は俺に気付いて、パッとさっきを思い出したような顔、そして爽やかな笑みを浮かべる。その可愛らしさがやばい。危うく卒倒してしまいそうな衝撃が走りそうになる。


多少の説明を加えると、デリー駅で俺が声をかけようと思ったボンキュッボンは平たく言うと行き着くところは 『チチ触らせてください』なわけだw ところがこのイッブソンの美しさはそういうのとは次元が違う。俺は彼女の突き抜ける青空のような清楚さと生き生きとした躍動感のある四肢と瞳に瞬時に魅せられていた。
子供でもなければ大人でもない、そんな生命力に溢れた野生の若いカモシカのような美しさを、彼女は思わせる。チチとかケツとか、そういうことは頭に浮かばなかった。彼女ともっと話をしてみたい。と思った。



(レッドフォート内部。広い敷地の中に点々と歴史のありそうな建物があり、それらが道で繋がっている)


俺は少し迷った。めっちゃお茶にでも誘いてえ…。が、隣にはお母さんがいるし俺の列の荷物検査はもう間近だ。タイミング的には今しかないような気がする。やめた方がいいか?いや、旅の恥は掻き捨て!いけ、行くんだVES!!






『え、えーと…今夜カレーでも一緒にどう?ww』






やばいなぜか頭が混乱してカレーに誘ってしまったwwインド人をww アメリカ人が日本に来て見ず知らずの日本人に「寿司でも一緒にどうかな?」って言ってるようなもんじゃねーか!インド人なんて毎食カレーで飽き飽きしてるっての!!(偏見)




(イッブソン。かわいいな〜あーあー)


目を丸くして、「え〜w困るわ〜wうふふ、クスクスクス…カレーってww」というように笑うイッブソン。お母さんもニヤニヤしてるだけでノーリアクション。




こ、これは……。








行けるんじゃないか!?









イッブソンは確かに困ったそぶりを見せている。んがしかし、これはいわゆる【形式的な困り顔】である。男の誘いにホイホイついていっては女が廃る!そこで言葉だけでも一旦断っておくことにより、私はそんなにお安い女じゃないのよ(でももう少し押してくれればいいわよ!)。というわけである。SPA!で読ん…もといブクロのナンパマジ(略)の勘がそう告げていた。

その証拠にイッブソンは転げるようにクスクスと笑いまくっていた。『いや、うまいカレー屋知ってるんだよね!』とか、俺は必至になっていた。この笑い方は…押せばっ倒せる笑い顔なんじゃねーだろうか…。嫌よ嫌よも好きのうち!!よしいけー!




(庭園はきれいに整備されている。草むらをリスなんかが遊びまわったりしてる)



『だ、だからさっ、今夜なんかは……!あーっ!』







俺の列が進み、番になってしまった。検査はスムーズに進み、俺の後ろから人がぐいぐいと押し出されてくる。…イッブソンは…まだ検査の列に並んでいた。





城内部に入ってしまった俺。ここでイッブソンを待てばいいのかもしれんが、それはアイドルの出待ちみたいで十中八九キモがられるだろう…。俺は運命というものを信じることにした。イッブソンにはなんとなくまた会えるような気がする。そう思って奥の方へと進んでいった。


…頭の中で、小さなクリスタルケイが恋に落ちたらを熱唱するウォームアップを始めていた。




Cに続く。