バラナシ4・音が気になるんスよ…





『さ、サンピエトロ寺院…』






「VES?何か言った?」   『あ、い、いや…なんでもない』









あーいかんいかんあまりの事に一瞬メダパニってしまった…。


それにしてもfanny…まだうら若いのに随分はしたないじゃないか!簡単にそんな男と一緒の部屋で寝泊りするなんて!お父さんは悲しいよっ!







『あ〜っと、その〜……それはとても、楽しそうだと思うんだけれど…。危ないよ』



「危ないってなにが?」



『夜になったら俺が野獣になってしまうじゃないか』



「…………」






きょとんとした顔をして眼を丸くするfannyとyui。なにかがこみ上げてくるような一瞬の溜めがあり、「あは、だーはっはっは…っ!!」と腹を抱えて爆笑しだした。おおお…こういうボケは万国共通なんだなあ。




「あーはっはっはっは……(涙) オーケーオーケーいいわVES、わかったわよ。フフ、じゃあ私とyuiが4階、あなたは屋上に一人部屋ね」



クスクスと笑いながらfannyがあっさり俺の意見を容れた。あっけらかーんとした顔を見て、あら…ひょっとしてからかわれただけなのかな?と思う。






フレンズGHは縦長の4階建てだ。それぞれの階に客室が二部屋ずつあり、屋上の横には一部屋だけある。俺にはその部屋が割り当てられた。エレベーターがないので階段を登るのが一苦労ではあったが、風通しがよく、また隣室の生活音の心配をしなくていい、なんだか一人暮らし感のあるいい部屋だった。窓からはかろうじてガンガーを臨むことができる。





しっかし…女の子二人と一緒に寝泊りか〜なんかそれも修学旅行みたいで面白そうではあった…んだが。

まあ野獣がどうのは冗談だし、彼女らといる事に別になんの抵抗もないんだけどな。じゃあ何がいけなかったのかというとだな…。








…本当の問題はココ。これなんだよ。



俺は部屋を下見した時にトイレの形状も確認していた…ザ・インド式トイレなんだよ…悲しいことに。





実は俺は、インドに来て初めてこのトイレに遭遇したのであった。デリーのホテルはたまたま洋式で自前のトイレットペーパーも流せたからさ。正直ついにきやがったな…という思いだった。
まあ有名なので知ってる方も多いと思うが、インド式トイレは紙がない。じゃあどうしてお尻をキレイにするかというと、トイレの脇に水道の蛇口とそれを貯める桶、手桶があって、その水で流すことによって洗浄する。その際には握手や食事などをする右手ではなく不浄とされる左手で…いかん頭痛くなってくる。

ついでにいい事を教えてあげよう。トイレ写真の右上。これはビニール袋なのだが何に使用するかというと、本場インド式トイレはトイレットペーパーを流すようにはできていないので、もし紙を使うならこの袋に入れて捨てないといけないわけよ…最悪だよっ!




そんな初対決しなければならないトイレを迎えて、女の子と一緒の部屋…というのはキツいんじゃないか、という懸念があったわけ。







あとな〜…







俺は【音を気にしちゃう人】なんだよっ!



まあこれは人によって様々で、気にする人もしない人もいるのはよーくわかってるんだぜ?でもな〜俺は自分の音を聞かれるのも、人の音を聞かされるのも結構ダメな人間なんだわ…。できれば世界全国どんなトイレであっても、用を足すときは自動的にJUDYANDMARYの【そばかす】がBGMとして流れてほしいって思うくらい。






くだらん昔話が始まってしまうが、ことの経緯はこうだ。
小学生の時、俺の親友の母親の知り合いの奥さんが英語が堪能な方だということで、俺と親友が別々に週1でその奥さんのマンションに英語の勉強を受けに行くことになった。2LDKの慎ましいマンション。俺はその方にリビングで英語を習っていたが、ある時奥さんが「ちょっとそのまま勉強続けていてください。お手洗いに…」と言って6m先の廊下のトイレに行った。



俺はなんの気はなしにペンを動かしていたが、廊下からマグマのうねるような音が…







そのままだとアレなので、爆撃に例えて話を進めてみよう。




                       ※


『……ん?なんだ、どこからか音が聞こえてくるぞ?』




…ルルルル…ヒュルル…



『こ、これは!』



ヒュウウウウ、ドボカーーン!ズガガガッ!!ダァーーーーン!!!!




『ば、爆撃だーーー!!!総員退避ッ!!』


ズゴオオオオォォオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!ドウッドウッ!!!ボボオンボボン!ヒュウウ…ドオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!ドウッドウッ!!!ボボオンボボン!ヒュウウ…ドオオオオン!


『ひぃ!す、すごすぎる!なんだぁこの絨毯爆撃はぁああ!!』


ドォォン…オン……。


『はぁ。はぁ…負傷兵多数!戦死者は数え切れない程ですっ!!…生き残ってる者はいるか!?ようやく爆撃が終わった…のか!?』



ドォォン…オン………ルルルル…ヒュルル…




『ヒィま、まさか…』



ズゴオオオオォォオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!…
ズゴオオオオォォオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!ドウッドウッ!!!ボボオンボボン!ヒュウウ…ドオオオオン!ズゴオオオオォォオオオオン!ドウッドウッ!!!ボボオンボボン!ヒュウウ…ドオオオオン!




『第二波到来ッ!!各自衝撃に備えてッ!!う、うわああああああああーーーーーっ!!!』




……………………


                       ※



もうそれは幼心にハートが焼け野原なわけだよ。俺は、と殺されるのを待つ豚のようにプルプルしながらペンを走らせられないでいた。ドアが開き、ペタッペタッと足音が近づく。なんでか死刑宣告を待つ気分だ。よいしょっとと隣に座る奥さん。


「ごめんねぇ〜じゃあ勉強続けましょうっか!(ニコニコ)」


ほ、ほくさん…しょ、しょんな爆撃された後で何事もなかったかのような顔されましても…俺のハートはそんなに頑丈じゃないっスよ……(泣)どうしたらいいんですかぁぁああ!と、平常心に戻るには相当の時間を要した。
後でダチに聞いたらやっぱりダチも気になるって言ってた。いや、人それぞれの体調とかあるのは知ってるんだけどな。まーそれからだな、俺が音を気にするようになってしまったのは…。




書いてて非常に疲れる回だ…汚いのは好きじゃないんだよ。だけどインド旅行とトイレとは非常に密接で重要な関係があり、インドを旅行する時も、旅行記を読む時でさえ、トイレを無視する事はできない。バックパッカーの間には 【インドisトイレ、トイレisインド】 という言葉があるくらいに。…ごめん今適当に作った。





そんなわけで、俺はこのバラナシのフレンズGHで一人でじっくりインド式トイレットと向き合うことになったのである。





5に続く。もちろんトイレ格闘編ではないww